【中国東西旅行】旅の準備
8月下旬から9月中旬までの3週間ちょっと、中国の東西をぐるっと回る旅行に出ていました。
上海を出発点に、南京、武漢、成都、蘭州、武威、張掖、敦煌、西安、延安、北京、天津、青島と行ってまた上海に戻るルートです。
高速鉄道か鈍行列車、バス、飛行機などを乗り継いで、リュックを背負いながら転々と各都市を訪ね歩いて行きました。
リュックは約15キロ、毎日平均10キロ前後歩き、帰宅後は3キロほど痩せた健康的な旅です。
▼ルート選定と準備
諸事情で日数が最大25日までしか取れなかったので、そこで行きたい場所を行けるだけ詰め込むことにしました。
まず敦煌には絶対に行きたかったので、敦煌周辺のシルクロードの旅で1週間は確保して、その他南京、成都、延安も行ってみたい土地候補として入れることに。
自然と大陸を敦煌でUターンするルートになりました。(以下概略)
(地図お借りしました。http://www.arachina.com)
- 南京…南京大虐殺記念館
- 武漢…辛亥革命博物館
- 成都…趙雷の歌「成都」に出てくる「小酒館」(聖地巡礼)
- 蘭州〜敦煌…シルクロードの旅(feat.井上靖『敦煌』)
- 西安…兵馬俑
- 延安…革命聖地巡礼
- 北京…趙雷の歌「鼓楼」に出てくる「鼓楼」(聖地巡礼)
- 天津…学生のとき1ヶ月滞在した南開大学再訪
- 青島…浴びるほどビールを飲みたい
趙雷とは私がこの2年間、毎日欠かさず聴き続けてきた中国のロックミュージシャンです。
私の中国語レベルがアレすぎて未だに歌詞の半分も理解していませんが、彼の音楽にはまってから好き嫌いを超えた生活習慣の一つとして聞いていました。
彼の歌にはいくつか実在する場所が出てくるので、聖地巡礼することに。
その他はかつて大学や院で勉強した中国近現代史と仏教美術ゆかりの地を選んでいます。
7月に学期が終わるといそいそルートを考え始め、同月末から8月中旬まで切符やホテルを手配。
中国の鉄道は座席が全て予約制(売れ残ってれば当日も買えます)なので、最初の一週間分はガガッと押さえて予め最寄駅で発券してもらいました。
ホテルも外国人が泊まれるホテルかどうか確認しないと追い出されることがあるので、地球の歩き方のリストやネット情報などをにらめっこしながら予約。
バックパッカーの旅ですが、最も恐れているのは宿無しで路頭に迷うことなので安全そうなホテルであればあまりケチらず予約しました。
ネットで予約する際、「内宾」(中国人対象)「外宾」(外国人対象)などの表記を目印に泊まれる部屋を探していきます。
内宾対象の部屋をうっかり予約してしまうとチェックインしたときに断わられる可能性があります。
この点ユースホステルはまず安全、「宜必思酒店」「锦江酒店」などの有名ビジホも安パイ、あとは各ご当地の老舗ホテルなどです。
だいたい一泊300元(5000円程度)までを目安にしてましたが、ユースホステルやビジホは100元代でもたくさんありました。
武威や延安などやや田舎町だと老舗ホテルくらいしか選択肢がなく、大都市北京はユースホステルですら値段が高め、など色々ご当地事情があります。
個人的に夜ゆっくり快適に寝られないと悲しくなって旅程に差し支えそうだったので、あくまで「ケチらず安全最優先」をモットーにしてました。
というか、バイクでキャンツーに行く時なんかもそうですが、私の旅の基本は「生きて帰ること」です。
中国人でもあんまりしてる人がいない女の一人旅なので、宿泊や移動含め、危険そうなことは金を払ってでも避けたい、という一心で旅程を組みました。
さらに同時並行で買い物もしておきます。
7月はタオバオで旅行用ハンガーや洗濯バサミなどのグッズを買いあさり、 8月は日本に一時帰国したついでに、100均や無印、アウトドア用品店等々で石鹸や衛生用品、携帯用品など細々したものを購入。
こういう準備期間が一番ウキウキします。
実家で私が旅の準備をしてる横で、父親もちょうど海外登山に行く準備をしており、お互い栄養補給食(行動食)を交換。
こういう親子の触れ合いもいいなあと思いながら上海に戻りました。
▼旅の持ち物
15キロのリュックの中身ですが、だいたいこんな感じです。
リュックはMYSTERY RANCHの容量33Lのバックパックです。
▽基本
▽生活道具
- ハンガー、洗濯バサミ
- うたまろ石鹸
- 体用石鹸、洗顔用紙石鹸(よーじや)
- 歯ブラシ、爪切り
- 化粧品、スキンケア類
- コンタクト、メガネ
- ポケットティッシュ、ウエットティッシュ
- 生理用品
- マスク、風邪薬など常備薬
▽貴重品類
だいたいこんな感じです。
貴重品類、特に電子機器とバッテリー類が5キロくらいあって重たい。
カッパとか一度も使わなかったものもありますが、基本的に必要最小限かつ全員スタメンのラインナップです。
中でも思いの外重宝したのはうたまろ石鹸(笑)
中華料理を食べると赤い油の油染みが無数にできるので、一瞬で赤い染みをなかったことにしてくれるうたまろ石鹸、持ってて良かったです。
あとはやはりモンベルなどのアウトドア用品、買い揃えていて正解でした。
衣類もアウトドア用だと動きやすいし乾くのが早いので洗濯しやすい。
折りたたみリュックやサコッシュもバッグインバッグ感覚で使えるし便利です。
この辺はキャンツーや登山の際にコツコツ買い揃えていたので楽でした。
で、上海で3日ほど呼吸を整え、まずは南京に向け出発しました。
【上海生活】質問その2 ファッション
だ〜〜〜〜いぶ日が開いてしまいましたが…ご質問の続きです……。
6月あたりから怠け癖が再発してしまい無職学生の身分を存分に謳歌していました。
今回はファッション中心でご回答です。
といっても独断と偏見による一意見なので、ふ〜んくらいに読み流してくださいませ。
▼中国人女性は化粧をあまりしないって本当?
これは私もびっくりしたことですが、こっちの女の子お化粧めっちゃしますよ。
私が5、6年前に北京に行った時はそんなに化粧してる子多くない印象だったんですが、ここ数年でもうみんなアイメイクからリップまでバッチリ顔作っておしゃれしているようです。
しかも本当に美少女多い、ポテンシャルすごい、みんな細い…。
メイクは平行眉・陶器肌・アイシャドウ薄めアイライナーで目元強調・真っ赤なリップの韓流メイクが主流なようです。
こっちで日本風のメイク(原宿系かOL系か)をしてるのは8割日本人かな?という印象。
化粧品については日本のブランドは最強です。
資生堂とかPOLAだけじゃなくて「豆乳イソフラボン」とか「キャンメイク」とかプチプラコスメでも中国系企業のものより信頼と人気があるようで、代行業者が活躍しています。(その分日本より数百円程度割高)
日本は中国の人も旅行に行きやすいし、日本で買う方がお得な化粧品いっっぱいあるからそりゃ爆買いもするわと納得しました。
話は脱線しますが、「化粧品、100均、無印良品」は個人的に「三大日本で買う方がお得商品」です。
どれも中国で買えますが、やっぱり数十円から数百円高くなる。
特に元がそんなに高くない商品は割高だなあと感じてしまいます。
ていうか安いのが魅力だからそれなら上位互換買いたくなるけどそんなお金出してまで欲しいか微妙、という絶妙なラインにこれらの商品があるので、だったら日本に帰るまで買うの我慢しようとなります。そりゃ爆買いも(略)
で、話はお化粧に戻りますが、すっぴんの子も相当数います。
フリフリの服でめかしこんでるのに寝起きすっぴんメガネみたいな子も割と見ます。
で、歩いてて綺麗な花が咲いてたら普通に自撮りを始めます。あとなんか陽当たり(光量)いい場所とかに遭遇しても自撮りし始めます。背景普通のフェンスとかドブ川とかでも気にしない。
とにかく自分大好き。化粧してないくらい加工でどうにでもなるし精神(化粧してても加工はマストだし)。
そして別に化粧しないまま外に出ても誰も気にしないので、ただただ自分のテンションを上げるためだけにお化粧して、好きな服を着ているんだな~という印象です。
このある意味楽な文化、日本にも早く伝播してほしい…。
というのをいつも行ってるネイルサロンのネイリストさん(19歳)に話したら、「え〜中国でも化粧せずに人に会うのはちょっと失礼って感じだよ〜〜」って言ってたので、スッピン族も早晩少数派になるのかもしれません。
自撮り族は生き残ると思います。
▼服は買った?日本では未だガウチョやミモレ丈のスカート、刺繍の服なんかが流行ってる。
タオバオ(ネット通販サイト)でアホほど買ってます。
日本のトレンドの服も売ってますが、やっぱり人気なのは韓国かなあ…。
スリーラインとか、スポーツカジュアルな服はよく見ます。
服のトレンド自体もう世界的な発信地は韓国と言われてるので、「韓式(韓国風)」をよく見るのは当たり前なのかもしれません。
ただ、ガウチョもミモレ丈も「日式(日本風)」というカテゴリーに分類されてそれなりに種類はあるので、自分の好みのスタイルを検索していいのがあればお買い上げです。
で、私のオススメは「中式(中華風)」です。
チャイナ服ってデザイン最高じゃないですか、あれ今かなりハイセンスに仕上がってて、着る勇気はないんですけどマジで鑑賞用にもってこいなんで紹介します。
や、ヤバくないですか…?
モデルさんの仕上がり具合も最高ですけど、こんなキュートでレトロな柄からポップカルチャーぽい柄までデザインの幅広すぎませんか…?
この伝統的な型にパンチ効いてる柄、ミニ丈でマオカラーなところがなんともエロくて辛い。
知り合いに似合う女の子いたら絶対貢いで着せたい…。涙
チャイナドレスの亜種でこういうのもあります。(ブルゾンとプルオーバーの中間みたいなこの服なんて言うんですかね)
やはりマオカラーのデザイン最強。超クール。配色も分かってる。
タオバオの画面キャプチャであれですが、最近は漢字をうまくデザインしたシャツもあります。
変な外国語書いてるシャツとか敬遠する人でもこれだと漢字(「白砂糖」とか「特製」とか)もデザインの一部なので普通にカッコいいのでは。
ちなみに私が買ってるのはせいぜいこういう主張しない、さりげない中式シャツです。
やっぱ歳と似合う似合わないの問題があるんで…ふふ…
でも元々マオカラー好きで(首が詰まって見えない笑)シンプルでストンとした型のシャツはつい買っちゃうので、これはこれで買うのも着るのも楽しいんです。
実は数年前にUNIQLOがマオカラーのシャツを出した時、6着買って今ようやく2着まで着潰しました。
当時は仕事してたこともありジョブス式で同じシャツ着てたので、今は新入りのいろんなデザインのシャツ着られてそれが楽しいです。
こういう新しいデザインの服がたくさんあるので、1日タオバオ見てても飽きないです。
スタンダードから攻めてるデザインまであって本当楽しい…
ちなみにこういう日がな部屋にこもってタオバオしたり動画見たりしている人を日本語の「オタク」を引用して「宅男/宅女」と言います。「宅(引きこもる)」は動詞でも使えます。笑
(宅男宅女はもちろん本来の日本語通りアニメ漫画その他「オタク」な人を指します)
余談ですが、時々日本のセーラー服、コスプレではなくどっかの高校の本物っぽいやつを着ている子を大学構内で目撃します。
多分輸入業者がいて、可愛いと思って着ているんだと思うんですがどうしてもなんかいけない気持ちを抱いてしまって複雑です。
セーラー服風とガチのセーラー服では背徳感が違いますよねえ…
【上海生活】質問いただきました【生活編】
ネットで仲良くしてる方から、なんと私の留学生活について質問をいただきました。(嬉しい)
筆不精であんまり更新できていないのに、興味を持ってもらえてありがたいです!
というわけで早速以下回答です。
たくさん質問もらったので、回数を分けて答えていきますね~。
▼なんで留学先は上海なの?アメリカ(英語)等を外した理由は?(それともすでに英語は習得済み?)
大学の頃第二外国語で中国語を選択していて、アジアの美術や仏教美術を勉強していたこともあり、ずっと興味があったのが最大の理由です。
死ぬまでにどうしても敦煌などの仏教美術が見たい、現地語で拝観して拝んでみたいという野望を果たしてやろうと…。
また中国語なら再就職の面で考えても損じゃないというのも後押ししてくれました。
英語は友人との会話や海外旅行なら問題ないレベルです。
ニュースや映画は字幕がないと分からないので、中級というとこでしょうか。
英語圏を留学先候補に入れなかった理由は、中学生の頃から思っていたことですが英語は「なにかを学ぶための必要不可欠な基礎言語」ということが大きいです。
私にとってその「なにか」が美術や中国語だったということで、今の中途半端な英語力でも相当勉強や生活面で助けになっています。
いつかもっときちんと使えるようになりたいですが、ブロークンイングリッシュでも使えるなら良しとする!というマインドで妥協しております。
ちなみに北京じゃなくて上海にしたのは、暖かい地方に行きたかったからです。笑
実際上海も冬はそこそこ寒いですが、日本の雪国に比べたらまあ許せる方です。
▼「天天」とか「探探」とかどうして中国語は言葉を2回繰り返すの?
リズム感が良いからでしょうか。笑
文法の話だと、形容詞と動詞が重ね言葉(2回繰り返す)にできます。
形容詞なら意味や程度の強調だったり、動詞なら「ちょっと~する」という意味になります。
例) 他是高高瘦瘦的男生,真的帅哥。(彼は背が高くてスリムで、本当にイケメン。)
我想和他一起聊聊,看看电影。(彼と一緒にちょっとお喋りしたり、映画を見たりしたいなあ)
余談ですが、中国語には2音節の目的語しかとれない動詞が存在します。
こういう重ね言葉に限らず、中国語を勉強する上で「話した時のリズム感の良さ」は結構大事なんではないかなと思う今日この頃です。
▼中国の新学期はいつから?一日のスケジュールは?
中国は2学期制で、9~1月の秋学期が新学期(前期)になります。後期の春学期は3~7月です。
私の通っている学校は上海の大学付属の中国語学校ですが、これは中国の大学に進学したい、編入したい外国人がまず相応の語学力をつけるために通うところです。
なので単位認定や卒業資格などは一切ないので、宿題をこなす以外は自由に過ごしています。
1日の流れはこんな感じです。
7:00 起床
8:00 授業開始
11:30 授業終了
昼食
勉強、買い物など適当に過ごす
18:00 夕食
宿題や風呂など適当に過ごす
誰かと飲みに行くことも
24:00 就寝
社畜時代から考えると天国のような生活ですね~。毎日暇な時間があって超超超超幸せです。
授業も楽しいので毎日喜んで通学してますが、毎日朝の8時に遅刻せずに登校してくるのがクラスで私くらいなので、最近先生が「イカは真面目だ」を元に例文を作るのが定番になってきました。
周りは大半が遊び盛りの若い子たちだし、別に授業受けなくても落第するわけでもないので、私ももう少し若ければ夜遊びしまくっていたと思います。
私も最近は週末は深夜まで友達と飲んで翌日二日酔いでゴロゴロするというパターンが多いです。幸せ。
ビール飲んでる時が一番幸せです
▼ラーメンや餃子など、本場の味はどう?辛いの?毎日何を食べてるの?
ラーメンも餃子も本場の味は美味しいですよ。
特に餃子は皮が分厚くてモチモチしていて、餡の種類も野菜、肉、海鮮など色々とあるし本当に美味しいです。
日本のラーメンは「日式拉面」というジャンルで、中国のラーメンとは別物扱いされています。(結構人気です)
本場のラーメンも麺の太さからスープの種類まで千差万別ですが、基本的に日式拉麺よりも安いです。味は当たり外れあり。
辛さですが、火鍋や麺類などは基本的に「辛くない」~「激辛」までお好みで選べます!
私はいつも「微辣(チョイ辛)」を頼んでいますが、時々めっちゃ辛いこともあるので苦手な人は「不辣(辛くない)」をお勧めします。
中華料理は地域によって大まかに味付けが違いますが、上海含む南方地域の味付けは比較的甘めと言われています。
小籠包の餡もちょっと甘め。美味しいですよ。
日頃は学食で適当に済ませていますが、毎日必ず食べていた麻辣烫(↑写真、マーラータン、野菜や肉をピリ辛スープで煮込んだもの)が最近メニューから消えてしまい、昼飯難民になっています。
あまりにも頻繁にマーラータンコーナーに通い煮込み係のおばちゃんとも仲良くなっていただけに悲しみでいっぱいです…。
一応学食は煮込み麺や餃子、肉魚のおかず類など各種揃ってますし、学内に謎のイタ飯屋や韓国料理屋、パン屋などもあるので、友達と気分でローテーションしています。
それはそうと、先日日本の友人が香港を旅行してから上海に立ち寄ってくれましたが、上海の方が安くて美味しい!と言っていました。
確かに味はその辺の汚い食堂でも結構美味しい。
街の食堂の牛肉冷麺。15元だけど超美味しい。
しかも一食大体15元前後なので(約260円)めちゃくちゃ安い。
実は食事は日本よりも充実してるかもしれません。
▼物価は安いの?
総じて安いです。物にもよりますがだいたい日本の3分の1くらいです。
食費は上段の通り外食でも安ければ10元(170円)程度でお腹いっぱい食べれますし、スーパーの生鮮食品も日本の半額くらいで売ってます。
日本と決定的に違うのは交通費の安さです。
地下鉄は初乗り2元(約35円)、高くても6元とかです。バスも一律2元のバスが多いです。
タクシーも10キロ走って40元(680円)程度なので、飲んだ帰りは気軽にタクれます。
新幹線も安いです。上海から約190キロ離れた紹興(紹興酒発祥の地)で100元(1700円)しない程度でした。日本だと東京ー静岡間(約180キロ)で5830円なので、気軽さが全然違います。
この金銭感覚に慣れてしまうとなぜ日本はあんなに交通費が高いのかとげんなりしてきます。
他雑貨類は本当にピンキリですが、外国製の輸入品は値段が2倍くらいに跳ね上がります。
コンビニでも日本から輸入している食品(お菓子とか飲み物でも)は現地のものと比べると高いです。
資生堂のような日本では割と身近なブランドもこっちでは立派な高級ブランドで割高です。
無印、KOKUYOとかの文房具、キャンメイクなどのプチプラコスメ類でも数百円値上げしているか、マジで倍くらいの値段で売っていたりします。
このキャプチャは私が最近ハマっている上海を舞台にしたドラマ「欢乐颂」の主人公が金策に苦しむ一幕なんですが、
家賃1800元
水道電気100元
親への仕送り2500元(※実家がド貧乏)
通話料200元
化粧品300元……
といった具合に生活費の内訳を綴っています。
上海の平均月収は10,000元(17万円)弱らしいですが、この主人公の月収はもう少し低く、友人と3人でルームシェアをしています。
服や雑貨類も、タオバオ(ネット商店)など上手く利用すればかなり節約でき、物価は確かに安いですが、庶民感覚でいうとそれでトントンくらいでしょうか。
もちろん上海には金持ちも沢山いるので上を見るとキリがないですが…笑
▼空気や水や気温は?すごしやすい?(黄砂やPM2.5がすごいのは北京?)
上海での感覚で言いますね。
空気→上海は比較的綺麗です。スモッグが出てることも多いですが、晴れ間も結構あります。想像よりも過ごしやすいですよ。私は普段マスクしなくても平気です。
月や星が見える夜もあります。最初は「どうせ月もプロジェクションマッピングでしょww」と思っていましたが、本当に見えます。
空気汚染がひどい時の上海。ビル群の色が霞んで見えません。
北京天津などの東北、工業地帯の内陸なんかは逆に前が見えないほどスモッグがひどいという話も聞きます。
ちなみに毎日天気予報で空気の汚染度(良好とか超汚いとか)が分かります。
警報が出たら学校が休みになるそうです。
気温→季節の変わり目は日本の四季とだいたい同じかと思いますが、春の三寒四温が凄まじいです。
0度近くまで冷え込んだ翌日に15度くらいまで上がる、35度の猛暑日の翌日に20度近くまで冷え込む…という感じで3~5月が過ぎ去り、気がつくと夏になってるようです。
夏場は40度くらいまで上がるそうで、現地民や経験者からは過酷だと聞いています。
嘘か本当か分かりませんが、気温も40度を超えると学校職場が休みになる規定らしく、平日の天気予報は39度までしか上がらず週末だけ40度を超えるとか…笑
水→水道水は綺麗ですが飲み水には向きません。ちょっと鉄?臭いです。
飲み水はミネラルウォーターを買ってきて飲んでいます。
街中に時々川が流れていますが、大抵ドブのような汚さです。(よく泥かきしている現場に遭遇します)
上海市内は頻繁に清掃車が稼働してますし、ゴミ箱もたくさんあり、中国の中でも綺麗な都市と言われています。
天気が良ければ本当に過ごしやすいいい街ですよ。
▼ディズニー、博物館、雑技団など観光はした?
すいません、実はそんなに出歩いていなくてどれもまだ行けていません。笑
一年いると思うとつい観光は先延ばしにしてしまいます。
夏休みになったらウロウロしてみるつもりなので、また改めて回答します!
++++
次回に続きます。しばしお待ちを~
【上海生活】好きってこういうこと
中国に来てビックリしたのは、カップルのいちゃつき具合が半端ないことだ。
もともとこっちでは、仲良しの友達なら肩を組む、手を繋ぐ、腕を組む、は女の子同士(時々男の子同士も)なら当たり前だ。
しかしキャンパス内はもちろん、街中でもレストランでも電車の中でも至る所で密着しながら歩くカップルを見かける。
彼女を後ろから抱きしめながらよちよち歩く彼氏。
お互いの脚をクロスさせて座席に座るカップル。
彼女の肩を抱きながらラーメンを食べ、終いには膝枕してもらったりおっぱい揉んだりしている彼氏…。
目のやり場に困るものの、果たしてこの人たちは公の場でどこまで見せつけてくるのか、つい観察してしまう。
何人か中国人の若い子に聞いてみたが、やはりここまでするのは個人差があるらしい。
はっきりと「そんなことしたら性欲持て余してるのかなと思われる」と言ってくれた子もいた。
よく見かけるにしても、一般的とまでは言えないらしい。
日本は恋人同士でも手を繋がないカップルもいるし、そもそも手を繋ぐこと自体勇気を試されている気がする。
手を繋いでも肩を抱いても不自然ではないけど、少女漫画脳(週刊誌脳?)からするとそれだけで「なんてアツアツなんだ」と思ってしまう。
だから抱き合って歩く彼らを初めて見たときはなにかいけないようなものを目撃してしまったようで、目から鱗だった。
そして、「ちょっとは場をわきまえてよ」と少しだけ不愉快な気持ちになった。
しかもそういう熱愛カップルの大半は普通の容姿の人たちで、全く他人の容姿をとやかく言える身分ではないんだけれど、男女ともに服も化粧もなんだか垢抜けない感じの人が多い。
彼女諸君はまだしも、特に彼氏諸君にイケメンがいたのは見たことがない。
留学生同士の雑談でも、野暮ったいカップルほど密着するのだろうか…と話題になったことがある。
それだけ彼らだけの濃厚な世界があるんだろうなと思って、見かけても気に留めないようにしていた。
それからも彼らを見過ごす場面はしばしばあったが、ふと気がついたことがある。
多くの中年夫婦や、老夫婦も同じように手を繋いで歩いていることだ。
お揃いのジャケットのペアルックで歩く40代くらいの夫婦や、夕方手を繋いで散歩する60過ぎくらいの夫婦。
ジョギングする奥さんの後ろを守るように、歩調を合わせて走る旦那さん。
もちろんごくごく普通の夫婦ばかりだ。
これも日本で見るかというとそう見ない、見たら絶対ツイッターとかで呟いちゃう光景だ。
どれも微笑ましいというか、仲の良さが滲み出ていて幸せな気持ちになる画だ。
彼らが若かった頃、今の若いカップルのように振舞っていたかは分からない。
けれどいつも肌を触れ合いながら接してきたから、年を取っても自然と手を繋ぐんだろう。
今の若い子の熱愛風景の延長線上に、年配組の穏やかかつ親密な距離感があるのかもしれない。
みんな、「好きって触れ合いたいってこと」と言わんばかりだ。
ふと、素直に恋人への愛情を表現するために誰かの目を気にする必要があるのかな、と少し考えた。
まあ節度は必要だと思うけど、案外彼らが間違ってるわけでもないなと最近は思う。
怒ったり泣いたり感情の激しい国だなとよく思うけど、同様に結構愛に溢れた国だなと感じ始めた。
ごく稀に、同性愛ぽいカップルがキャンパス内でキスしているのも見かける。
公然といちゃついているカップルを見ると「お幸せに」と思うようになった。
むしろ、寮の中にいたところで友人たちから「隣の部屋の喘ぎ声がうるさい」という被害報告が絶えない。
しかも外国人寮なのでエロいことしてるのは全員中国人ではない。
それ以前に学生が部屋で致すのは止められないししょうがない。
中でも外でもエロの域まで行ってしまったものはもう耳栓するか目を瞑るしかないな、と侘しく思っている。
【上海生活】出会い系で出会ってみる。
3月末くらいに、日本人留学生の友人たちと飲んでいたら、そのうちの一人が会話の練習のために出会い系アプリに登録したという話をしていた。
日本でおなじみの出会い系アプリ「Tinder」とまるっきり仕様が同じ、「探探(タンタン)」というアプリだという。
使い方は、自分が設定した距離圏内にいる人の写真が現れるので、好みなら写真を右にスワイプ、イマイチなら左にスワイプしていく。
自分が右スワイプした人が、自分のことも右スワイプしてくれていたら晴れてマッチング成立、チャットができるようになる。
Tinderも探探も基本的にはセフレ探しのツールだ。
で、その友人も早速現地民とマッチングしてチャットをし始め、翻訳アプリを駆使しながらチャットを頑張っているという。
私とほかの友人もその場でインストールして、目の前にいる友人を右スワイプして遊んでいた。
その日は冗談半分で終了したのだが、後日改めてアプリを開いてみた。
というのも、そもそもTinderには地域格差を思い知らされた経験があるからだ。
日本で仕事をしていた頃私は人口10万人に満たない街に住んでいたが、その頃首都圏に住む友人にTinderを教えてもらい興味本位で使ったことがある。
しかし少子高齢化かつ過疎化が著しい街ではそもそも登録者数が少なく、画面に現れる人は100キロ近く離れた県庁所在地に住む若者ばかりだった。
県内外から人が集まる大型イベントがあるとそれなりにスワイプもできるのだが、イベントが終わるとまた過疎る。
平時のTinderは常に過疎っていた。
よく自治体が交流人口の拡大を政策目標にうたったりするが、この時ばかりは大いにやってくれと思った。
で、今自分は東京よりはるかに人口の多い上海にいる。スワイプできないわけがない。
事実、探探にはアホほどメンズが現れた。
金しか持ってなさそうなパパ活にもってこいのおじさんもいれば、女子ばりに美肌デカ目修正している男の子もいる。モデルか俳優か?と思うようなイケメンは多分サクラだ。
スワイプすればするほど色とりどりの男性が出てくるので面白くなって数日(主に左)スワイプしまくっていた。
時には美人なお姉さんとマッチングしてひたすら容姿を褒めたたえたりもした。
その中で、とある男の子とマッチングした。
その子の写真にはスズキのバイクが写っていて、原チャが一般的で250cc以上のバイクをほとんど見ない中国では貴重なライダーに思えた。
チャット画面で「なんのバイクに乗ってるの?」と中国語で聞くと、なんと日本語で「スズキの〇〇」と返事が返ってきた。
彼は以前日本語を勉強したことがあるらしく、日本語と中国語でバイクやらなんやらの話をしてちょっと盛り上がった。
その後WeChatに移行し、2週間ほど雑談を続けた。
私は基本的に冗談しか言わないが、笑いが通じるらしく向こうも楽しんでくれてるように見えた。
彼の返信には時々ネットスラング(日本でいう「草」的な)が入っていて読解に時間がかかるが、私が中国語初心者であることを踏まえて気長に付き合ってくれる。
私が体調不良とか、携帯がトラブってるとか、友達と飲んでて返信しなかったとか、なにかと「大丈夫?」「こういう解決策があるよ」「気をつけて帰ってね」など親切に語りかけてくれる。
かと言ってその間実際に出会おうというお誘いはあまりなく、お互いいつか会えたらいいねと言っていた。
私は出会い系でセフレや恋人を探したことも、探し当てたこともないので、果たしてこの男の子の真意がなんなのかは見当もつかない。
が、仮にヤリモクだったとしても数週間意味不明の中国語で話しかけてくる日本人と雑談を続けるのは結構根気強い人だと思う。
私も「会って一発やるくらいならいいかな~」と絆されかけていたところでちょうど「今度会おうよ」というお誘いが来たので快諾した。
しかし興味津々とはいえ、実際に会うとなると恥ずかしながら処女の如く警戒心が働く。
日本でもマッチングアプリで外国人に会いに行った女の子が殺される事件があったばかりなので、「生きて帰る」を目標に会うことにした。
幸い、事前に雑談などから彼の本名等々概ね確度の高い個人情報を把握していた。
日本にいる家族に「私が音信不通になったらこれを警察に通してくれ」と彼の素性ファイル を丸投げした。
またありがたいことに友人が一人一緒についてきてくれる流れになったので、彼女にも同様に伝えた。
ここまで準備してもなお、基本引きこもりな性分のせいで当日はめちゃくちゃ気が重かった。
「一発やってもいい」と思っていた自分はなんか汚い空気を吸いすぎて頭がおかしかったのかなと後悔した。
しかも大事な友人まで巻き込んでいる。
しかし一緒に来た友人も似た性格なので、2人してバスでグタグダしていたら降りるバス停を間違えて待ち合わせの時間に遅刻した。
「申し訳ない」と彼に詫びメールを送りつつ待ち合わせ場所近くまで行くと、彼とおぼしき男性がいる。
道路の反対側からメッセージを送ってみるとその男性がスマホをスイスイしている。間違いない。
もうここまで来たら自分の股の穴を差し出してでも友達を生きて返そう…と腹をくくり、ようやく彼に声をかけて店に入ったのだった。
(三十路にしてこの警戒心の強さは小心者なのが半分、もう半分はこの世代はあんまり匿名社会のネットを信用してないからだと思う)
実際、彼は日本語が相当できて、我々の指差し中国語会話の出る幕はなかった。
彼はチャットしていた時から「内気な性格で…」などと自己紹介していたが、物腰の柔らかい、歯並びのいい笑顔が印象的な青年がそこにいた。
私と友人は彼の話に耳を傾けつつ、日頃気になっている中国語の質問をしたり、普段の生活の話をしたり、割とくつろいでおしゃべりした。
中国式のお酒の飲み方も教えてもらい、白酒を飲み交わして宴会した。
つまり、結構楽しかった。
その後、一度現物と会っただけあって連絡頻度は流石に落ちた。
でも友人が尋ねていた中国語の質問に後日律儀に回答を寄越してくれたり、私が「一度家庭料理の餃子を食べてみたい」と話したのを覚えてくれていて彼の母上お手製の餃子をバイクに乗って出前の如く届けてくれたりと、相変わらず親切だ。
彼のおふくろの味の餃子はちょっと濃いめの醬油味が効いた餡で、何もつけなくてもものすごく美味しかった。
今でも時々チャットで会話しているが、彼は多少人たらし(人好き?)なところはあるものの根本的に良い人疑惑が拭えない。
私も彼が笑ってくれるネタは何だろう、中国語でどう言えば良いんだろうと二重に悩みながらまだ冗談を言い続けている。
彼は一度仕事で接した日本人を評して「日本人は本音を言わない」とぼやいていたことがある。
そう言われたときは他人事のように「確かに~」と思ったけど、今はなんとなく心に刺さるものがある。
いつも冗談ばかり言ってごめんね、あと個人情報調べまくってて普通に考えたら気持ち悪いね、と少し後ろめたい。
自他共に認める「こじらせ系」の私は、出会い系で出会ったところでそこからの付き合い方なんて全く分からない。
なんなら出会い系じゃなくてリアルな紹介で出会っても同じ悩みを抱えている気がする。
いつか彼が私を友人と呼んでくれる日は来るんだろうか。
趣味の合う人だけに仲良くなれたらいいなと思うけど、語感も分からない言葉の距離は到底推し量れない。
でも機会があれば「そのバイクに乗って、どこまで行ってみたい?」と聞いてみたい。
必ずしも自由にバイクが乗れないこの国で、この男の子はきっと私と同じ自由の快感を知っているんだろう。
ちなみに探探もTinderも、みんな同じ顔に見えてきて飽きたので、既にアカウントは消してしまった。
中国ではTinderは欧米系外国人か欧米に留学などしたことある越境中国人が大半で、探探よりもハイソサエティな感じだった。
パパ活したい女子大生はTinderがオススメらしいです。
【上海生活】気がつけば上海
3月から上海で留学生活を始めた。
ようやく2ヶ月弱経ち、買い物や食事など生活が概ね慣れてきた。
一方で言葉は全然進歩がなく、授業についていくのも必死だし、話すのも聞くのも全く不自由している。
ただ、語学をちゃんと勉強することは仕事を辞めてまでしたかったことなので、先生の話を聞くのは本当に面白くて楽しい。
周りも遊び盛りの若者が多いので、私は特に真面目に見えるらしく、先生も積極的に教えてくれるのがありがたい。
自分もモチベーションがあるから外国暮らしを楽しめている気がする。
授業も面白いが、こっちで出会った友人も結構刺激的だ。
日本人の留学生の中には案外私と同年代の人もいて、仕事や家庭環境など似た境遇の女性とすぐに仲良くなった。
社会人の時に出会っていたら間違いなく毎日一緒に飲みに行ったであろう人と今ここで出会ったことで、より自由な上海生活は毎日彼女のおかげで全然飽きない。
今日習った文法の話とか先生の授業展開の狙いとか、真面目に談義できるのが楽しいし、彼女も私もビール党なのでしょっちゅう飲んでいる。
こんな風に共通の話題を懇々と語れる、気の置けない友人ができるなんて思いもよらなかったので、本当に神様からの贈り物だと思っている。
友人と一緒に飲んだ中国のクラフトビール。可愛い美味しい。
クラスはほとんどが韓国の若者で日本人は私1人だけど、韓国系アメリカ人の年配の女性がなにかと気にかけてくれる。
彼女はもう仕事を引退していてセカンドライフで留学に来ている。
厳格な雰囲気で私もよく「それは文法が違う」とかズバッと間違いを指摘されるが、一緒に植物園を散歩したり、休み時間に話したり、可愛がってもらっている。
私が仕事を辞めてることも特に何も言わないのでどうやら寛容らしい。(最近他人の人格を推し量る指標がこの仕事辞めた問題への態度になっている)
彼女に始めて出会った時、こんなに生涯学習に突き進んでいる人がやはり存在した!と感動した。
というか、こういう人たちは勉強のために行動的になることを一切否定しない。
私は未だに身内から「語学なんて仕事しながら勉強出来るのに」と言われたことを根に持っているが(笑)、留学に来ている人は仕事しながらか仕事辞めてかなんて関係なく勉強意欲があることを素直に評価してくれる。
基本的に彼女や欧米系の人たちは将来に関してポジティブな意見を言ってくれるが、今を頑張れば次のチャンスが見えるかもしれないがその逆はないという発想のようなので、怠けている学生には結構シビアだ。
こういう考え方にもっと日本で接することができたらなあと少し思う。
まあ仕事のことについてはおいおい考えるので、今はネガティブな意見は右から左へ聞き流している。
留学生の大部分は若い韓国人で彼らはすでにコミュニティができているため、私のような年配組や東南アジア、欧米系の少数派の学生は比較的つるみやすい。
私も日頃はインドネシア人の女の子とご飯を食べているし、ときどきオーストラリアのヤングガールと遊びに行ったりする。
彼女たちと話すときは英語か中国語しか使えないので、いかにも留学生っぽい絵面ができる。
みんな中国語を使いこなせなくて、英語と中国語がごちゃまぜになった言語になってしまうが、それが最大の共通言語になっている。
間違いと分かっていてもその間違いが面白いので、もう意識的に間違える遊びも誕生してしまったので毎日言葉遊びしてはしゃいでいる。
でも彼女たちは本当に日に日に話せるようになっていて、漢字が読めない分耳と口が相当鍛えられている。
あんま冗談ばっかり言ってないで見習わないとなと背筋が伸びる。
他掃除のおばちゃん、食堂のおばちゃんなど、顔馴染みの人は他にもいるが本当に上海訛りの言葉を話すので私の語学力ではまだそこまで関係が築けていない。
そういうもっと話せたら仲良くなりたい人はたくさんいる。
仕事していたときは誰とも話したくないとすら思うこともあったが、環境が変わると心境も変わる。
そして自分なりに前向きに頑張ることを暖かく応援してくれる人は結構いる。
それだけでも来てよかったなあと染み染み感じていて、なんだか本当に日本にいた時の自分は心底疲れていたんだなと少し哀れになる。
私は結構、この国が好きですよ。
【ブータン旅行記】3 聖なるファルス
2月初頭から2週間ほどまた海外旅行に出ており、間が空きましたが続きです。
↓前回までのエントリーです。
◆男根ハント
ブータンの建物外壁には、「ポ・チェン」とか「ポー」とか呼ばれる男根の絵の魔除けが描いてある。
「ちんこや…」
旅行前に読んでいたガイドブックや旅行記で必ず紹介されていたので存在は知っていたが、実際に現地で色んな民家の壁でこのちんこの絵に遭遇すると、自分(と父)の中にいる10歳児がむくりと目を覚ました。
これはめちゃくちゃ面白い絵なんじゃないだろうか…絶対見逃せない…。
それから車で移動中に車窓からちんこを発見すると直ちに撮影した。
父が右側車窓、私が左側車窓を担当し協力してちんこをハントしていった。
その過程で「なんとユーモアに溢れた描きっぷり」と感動すら覚えたが、一方で「なんで外壁にこんなモロちんこを描いちゃうんだろう」と純粋な疑問がわき起こる。
ガイドブックには魔除けとしか書いてないがなぜちんこが魔除けになるのか繋がらない…。
その謎を解明するため我々はジャングルの奥地に向かい、ティンプーの本屋でナイスな本を発見した。
Karma Choden女史による「PhallusーCrazy wisdom from Bhutanー(男根ーブータンからのクレイジーな教え)」(2014、BhutanLamp Publishers)。
カルマ女史がブータンの各地で見つけた様々な男根表現をたくさんの写真と解説文で紹介している。
というか前書きですでに「この本の写真と記事は読者を悟りに導くこともあれば、単に笑わせることもあるでしょうが、どちらにしても目的達成です」と書いてある。
なんだよブータンの人もめっちゃわろてるやん…好き…と思って即購入した。
以下、この本の記事を(勝手に翻訳して)引用しつつ男根文化を紹介したい。
◆狂僧クンレー
ブータンの男根崇拝は土着の信仰と仏教の思想が融合した文化だが、その起源は15世紀にチベットとからやって来た僧侶ドゥクパ・クンレーの教えと言われている。
クンレーは「Divine madman(神なる狂人)」という別名を持ち、彼の教えには性的なものありで社会のしきたりなどまったく気にしない「不敬さ」でよく知られているという。
アウトレイジャスな僧侶だが、ブータンの仏教の重要な流派「ドゥク派」の高僧である。
で、ある時そのクンレーにアパ・ガイポ・テンジン(Apa Gaypo Tenzin) というブータンの老人が悟りへの祈りを授けるようお願いした。
クンレーはアパ老師に次のような祈りを授け、常に暗唱するように伝えた。
私は老いた男の、汚れなき、朽ちた木のように倒れ、根元から萎れた男根に安らぎを求める。
私は置いた女の、締まりのない、崩れて貫通できない、スポンジのような膣に安らぎを求める。
私は若く盛りのついた虎の、堂々と上を向き、死をも恐れぬ雷電に安らぎを求める。
私は喜びの波のうねりで心が満たされ、恥と抑制から解き放たれた乙女の蓮に安らぎを求める。
家に帰ったアパ老師に、家族が「なにかいい教えをいただいた?」と尋ねるとアパ老師はこれを誦じ始めた。
アパ老師が卑猥な祈りを口にするので家族は驚き、頭がおかしくなったかと思ってアパ老師を部屋に閉じ込めた。
アパ老師は部屋の中で一日中祈りを誦じていたが、ある満月の夜、ついに解脱した。
それに気づいた娘が老師の部屋に行くと、空になったベッドの上に虹がかかっていた。
娘の叫び声で家族が部屋に駆けつけると、虹が西の空へと消えていった。
その時、アパ老師の声が響いた。
「かまととぶった者たちよ、ここに残っておれ…」
よりによって高度な下ネタで天啓を得てしまったオヤジと、見事に振り回された家族へのいたたまれなさに涙を禁じ得ない逸話だが、この教えが今日のブータンの男根崇拝の元になっているという。
土着のアニミズム「ボン教」ですでにあった男根崇拝に、後から到来した仏教のクンレーの教えが上手いことハマって融合し、盛んに広まっていったようである。
クンレーは男根に宿った神の力をもって、悪霊を守護神に変えて追い払っていたという。
煩悩を強烈な性の力で屈服させるというか、すごいおカタい女教師がエクスタシーでキャラ崩壊しちゃうエロ漫画的発想に通ずるというか…ギリギリ分からなくもありません。
だからこそ魔除けとして信仰され、また見ての通り子孫繁栄、豊穣の象徴でもあり、それ故に「良いことの前触れ」という意味合いもあるのだとか。
ブータンの民家や建物の外壁には四神などが魔除けに描かれるが、ちんこがそこに肩を並べるのはそういう理由だそう。
さて、カルマ女史の本でも言及されているが「ブータン人はちんこの絵や彫り物においてめちゃくちゃクリエイティブ」である。
しかも絶対ふざけて描いただろというものから純粋な(?)祈りが込められたものまで温度差も表現も千差万別。
ぜひ私と父が童心に帰ってせっせと撮ったコレクションを見ていただきたい。
◆多彩なちんこの表現世界
★平面部門★
民家や商店の外壁に描かれたちんこたちを鑑賞(?)しよう。
レストランの入り口柱で発見。
飲食店だからなのか、「召し上がれ」と言わんばかりにちんこがお椀に乗っている。
左はボーダー柄、右は何重にもカリがあるかのような立体ウェーブの竿をしており、それぞれ画家の遊び心が偲ばれる。
一方、両方とも「少年アシベ」のような亀頭と、玉にツムジのような陰毛は共通しており、珍獣ライクなルックスでどこか愛嬌がある。
建設中のホテルの外壁で発見。これもお椀に鎮座しておられる。
陰毛のツムジはどこかにいき、代わりに玉の中心に向かって集中線のように生えているのが笑える。
飛び出した精子もすでに下向きの放物線を描いており、射精からの時間の流れを感じさせる。
民家の外壁で発見。横向きバージョンである。
なんと玉が渦を巻いているスパーユニークさだが、密林のような陰毛で隠されているのがいじらしい。
精子はまるで線香花火のように儚く飛び散り「もう出ない」と訴えているようでなんとなく情緒がある(ない)。
民家の外壁で発見。ついに右手のアシストが入った傑作の一つ。
しかも指が回らなかったのか小指は描かれておらず、竿の太さを強調するのに成功している。
一方で精子はピューと垂れてやや覇気が感じられないので、全体として「手で絞り出したら残りが出てきた」という印象になっている。
玉に破れたようなバリバリした円が描いてあり、渦巻き玉袋に並んで謎が深い。
居酒屋の外壁で発見。聖なる衣をまといしちんこ。
風化による脱色もあいまって、淡い色のちんこが衣を羽織り優雅さを感じる。
渦巻き玉袋と風に流れるような陰毛、天に向かって伸びる精子など、ちんこのどっしりさに反して壮大な飛翔感を生んでいる。
お土産物屋の外壁で発見。リアリズムの手法で描かれた傑作の一つ。
カリのフォルムや竿の皮のなだらかな凸凹、何より青スジまで書き込み、陰影のつけ方も含めてほとんどデフォルメしていない。
絵師が真剣にちんこと向き合った観察眼と、ちんこの雄々しさをありのまま伝えようとした努力が滲んでいる。
なんならこのモデルになった男性に会ってみたい、くらいの気持ちを起こさせる表現力だ。
また、軽やかに羽織られた衣によって、リアルなちんこに神聖さが付与されている。
精子の飛び方も「気」がひゅるひゅると昇天するように描かれ、これらの表現がリアルちんこのいやらしさを相殺している。
寺院近くのレストランの外壁で発見。
まずもって配色センスが素晴らしいアートな一竿。
一般的に茶色よりの肌色で描かれることが多いのに対し、ダイレクトに「エロ」なピンクを使いキッチュさすら感じられる。
車窓から流し撮りしたため全体像を写せなかったのが悔やまれる。
民家の外壁で発見。
一応屹立はしているが、カリが強調されず、皮がだぶついている感じなどから包茎を思わせる。
玉もシワになってハリがなく、聖なる衣も衣というよりリボンのように控えめだ。
これを見ると、本当にちんこそれぞれの個性を大事に描かれているのが分かり、篤い信仰心(?)を感じる。
精子が放尿するかのように出ていっており、なぜか哀愁を帯びている。
民家の外壁で発見。四神と肩を並べるちんこ。
基本的に民家の外壁は、ちんこよりも白虎や龍など聖獣が描かれる方が圧倒的に多い。
なのでこうして同列に並んでいると、こぢんまりと描かれる聖獣に構わずドン!と屹立するちんこの存在感を無視できなくなる。
こうして見ると「魔除け」というか、オヤジが玄関の前で仁王立ちしてるよりもこの家に入りたくないと思わせるものがある。なるほどな…。
峠のカフェ店内で発見。外壁ではなく店内の窓の上にしれっと描いてあった。
その日は長距離移動で、ラフな山道をひたすら車で走っていてその途中でカフェに立ち寄った。
紅茶を飲みながらぼんやり店内の装飾を眺めていたら、ふとこの絵の山がちんこ風になっているのに気がついた。
写真に撮って、その後父に見せると「ちんこや」と同意を得られた。
思い返せば、後述するが建物の外壁以外にも、なにか細長かったり先端があったりするものは自然とちんこ化している。
それだけ日常の中に、ごくありふれた形で、そしてあらゆる場所で、ちんこが人々を守っているのか。
全然関係ないが旅行前に「ムーミン」のアニメを夜な夜な見ていて、ムーミン谷の日常風景「おさびし山」を思い出した。
ムーミンたちが遊びに行ったり、悲しいときは逃げ込んだり、スナフキンが歌にしたりした山だ。
「きっとこの山はそんな心のふるさとの景色なんだろうな…」としみじみしたので「おちんこ山」と名付けようとしたが、なぜちんこを前にリリカルになってるんだろうと我に返った。危なかった。
★立体部門★
外壁(平面)以外にもちんこはあらゆるところで見られる。
まずはお土産物屋さん。ちんこが「welcome」と歓迎してくれている。かわいい。
ガラス越しにいくつかのちんこが整列しており、私のようなニヤニヤした観光客を待ち受けている。
「ちんこ村の愉快な仲間たち」にはなんと顔が付いているものや、炎を背負っているちんこもある。
ついに龍をまといしちんこまで現れてしまい、ここまでくると猥褻物の域を完全に脱し立派な工芸品である。
製作者の創造力とクラフトマンシップが感じられるが、多分これをお土産にあげても嫌がらせにしかみえない。
文化の違いが悲しい。
これはタクツァン僧院という崖の上にある寺院に行く山道の岩肌に彫ってあったものである。
なんとなく…もしかしたらちんこかもしれない…と写真だけ撮ったが、あとでカルマ女史の本を読むとやはりちんこ表現の一つだった。
民家の仏間の前でちんこ棒を発見した。
この長さと形状…一体何に使うのか分からない…と父と悩んでいたが、同じ家の中で答えを発見した。
閂。お前は閂やったんか。がっちり内側から家を守っていたんか。
これを発見したのは父だったが「こんなん悪魔じゃなくても絶対入られへんわ…」と唸っていた。
激しく同意。入れないどころか出られない気もする。
◆破廉恥は破廉恥です
もしここまで読んでくれた人がいたなら、かならず伝えておきたいことがある。
ブータンの人々の名誉のためにこれだけは分かってほしいのだけど、彼らは「下ネタは気軽に人(特に女性)に言っていいものではない」という当たり前のモラルを持ち合わせている。
興味津々でちんこについて質問する私と父に、ガイドさんはためらいがちに(というか半分引きながら)答えてくれたし、自らそういう話題を振ることもなかった。
むしろ私が逆セクハラしてしまったかもしれない。
どうか性器の絵が壁に描かれているなんて野蛮な国、と誤解しないでほしい。
日本の「ほだれ祭り」と似たものとして、肯定的に笑って受け止めてもらえたら嬉しい。